ルボア ファゴット調整
ファゴット(バスーン)は壊れない、壊れても気づかないと思われがちですがピッチや音程に関してはオーボエよりもデリケートな楽器です。ちょっとしたキーの開き具合が全体に大きく関与します。そのため積極的に調整しましょう!とはお勧めできませんが最低限度のことはできるようになっていると安心ですご注意頂きたいのは慣れない調整を行うのですから上手くいかないだけでなくドライバーやスプリングフックで思わぬ怪我や楽器に傷が付いてしまうことも予想されます。くれぐれも安全第一でお願いします
目次
1.ファゴット(バスーン)アラカルト
2.ファゴットの修理について
3.自分で調整してみよう
4.各部の呼び名:図参照
5.調整に必要な工具を揃えよう!
6.スプリング調節
7.キ-の関連の為のキーコルク調整。調節時の指の押し加減と感触について
8.ジョイント調整
9.ピアニシモの調整方法
10.テナージョイントの調整方法
11.ブーツジョイントの調整方法
12.ロングジョイント&ベルの調整方法
13.コントラバスーンの調整方法
1.ファゴット(バスーン)アラカルト
ファゴットは約300点の部品から出来ていてキーが長くて強度を必要とするキーが連動しています。その連動部分は約25箇所でキー間に用いられているコルクは0.3~0.7㎜が用いられています。また、替え指に必要な機能としてキーを押さえるバネとそのキーを無理やり開くバネが混在しています。これらを動かすことで楽器が吹き手の手足になるようにすることを調整と呼んでいます。
修理は調整とニュアンスが異なり、部品の破損や劣化による不具合を取り除き、新品の状態に戻しす、又は近づけることです。また、吹き手のリクエストやリードによって操作性や音程、音色などを変更する作業は調整と呼んでいますが、これらも修理の中に含まれます。
ファゴットは梅雨時から夏にかけてはボディが膨らみ、各ジョイントがきつくなります。反対に冬の乾燥時期は緩くなります。原因は湿気です。ファゴットは湿気をコントロールしなければなりません。まず、必要なことは楽器ケース内の湿度調節を行うことです。湿気の多い時期や何時間も毎日練習される場合は、楽器ケースを開いたまま練習することをお勧めします。さらに、除湿剤を入れておくと良いでしょう。反対に湿気が足りないとジョイントが緩くなるだけでなくボディが収縮してキーの動きが悪くなることがあります。それを防ぐには湿気 ケースから逃がさない、湿気を与えるのが一番です。冬場はケースを閉めて練習します。さらに「加湿や保湿」するものを入れておきましょう。ファゴットの最大の特徴であるブーツジョイントのU字管部分は、最も湿気が溜まりやすい部分なので、しまうときは必ずはずして掃除し、はずしたまま保管してください。さもないと黒いカビが発生して楽器が腐ってしまいます。
ファゴット全てに発生する構造上避けることが出来ない問題があります。 [重要]テナージョイントの(C-C#trカップ) [重要]ブーツジョイントの(Gリゾカップ) この二つのキーがトーンホールに食い込んで開かなくなることが頻繁に発生します。それぞれのキーが作動しないと(C-C#tr)が出来ない、mid.Gのピッチが低くなるトラブルが発生するので、その時は指でカップを持って引き上げてください。「パチッ」という音とともにその後正常に作動します。対処方法としてはそれぞれのカップとトーンホールの間に紙を一枚挟んで楽器をしまうことです。これによりトラブルは未然に防ぐことが出来ます。
2.ファゴットの修理について
ファゴットのキーメカニズムの磨耗や部品の交換時期は使用頻度(時間)や使用環境、取り扱いで決まります。プロ奏者のように毎日5時間平均で使用するとオーバーホールは10~15年です。なので週末のみ使用する方は20年以上必要ありません。部品の交換時期は折れたり、取れたり、錆びたりすると速やかな交換が必要ですが、通常は調節ネジの音消しコルクが3~10年、皮タンポは3~10年が一つの目安です。スプリングなどの金属類は正しく使用すれば20年以上持ちます。ファゴットの部品の劣化の一番の要因は水分によるもので錆やタンポの硬化で取替えが早くなります。
ファゴットの寿命はボディの劣化とキーメカニズムの磨耗に分かれます。ボディは大きなトラブルがなければ40年以上使用に耐えられますが、ボディよりもキーメカニズムの寿命が早くなります。目安は2回のオーバーホールで3回目は金属の強度が保てなくなります。たとえば、15年ごとにオーバーホールすると寿命は約45年になります。ただし、多くの方が寿命を全うするまでお使いの方はいません。長くても20~30年くらいで買い替えます。理由はファゴットの進化と周りの環境の変化にあります。近年はファゴットに大きな音を要求する時代になりました。そのため、各社はボディを太くしたり、金属部を硬くしてより大きな音で遠くに響く楽器を設計しています。古くなったからというよりはこの理由で新しい楽器を吹かれています。
修理の依頼方法は、直接または電話で技術者と話をしてください。間に人が入ると希望する修理は出来ません。依頼者の気持ちやニュアンスは直接会うか、電話で話(お声が聞きたいのです)をしなければベストな修理が出来ません。どうしても話せない場合は依頼内容や悩み事をメモにしておきましょう。そして、修理後は必ず吹いて確認します。その際に気になることは問い合わせます。ファゴットの修理は「楽器とボーカルとリードと吹き方」の相性も重要です。遠慮しないでどんどん聞きましょう。お客様と修理担当者双方が青くなるのが「楽器が直っていない」という問題です。修理後に「希望した場所に不具合を感じる」「使ってまもなく音が出なくなった」「他のお店で直っていないと言われた」など満足できない場合があります。これは修理者のミスの他にお客様とのコミュニケーション不足、配送時の問題、環境の変化などで発生します。これらは再修理を行うことで解決します。問題なのは修理内容と料金の問題です。修理者は料金に見合った修理を行うので、問題の大きい箇所から優先して修理します。そのため修理したことで他の箇所の不具合が気になってしまうことが良くあります。それを避けるためにも事前相談が必要ですが、要求度が高くなるにつれ高額になります。修理期間は修理内容で異なり、調整は1日から4日間、キーのメッキやオーバーホール等になると約二週間、管体折れなどの特殊な修理は数ヶ月かかる場合もあります。修理の預かり期間は問い合わせましょう。
ファゴットの修理金額は技術料、人件費、材料費、維持費、利益で決まります。修理(1件当たり)の目安
・技術料:修理の難易度で決まり、部品交換、音程、音色、吹奏間等は 500~2000円
・人件費:理容師(美容師)と同じで時給換算します。 4000~6000円
・材料費:(タンポ、コルク等の部品代)が加算されます。 ( 100~1500円)
・維持費:(家賃と光熱費と機械等の設備費)で時給換算します。 500~4000円
・利 益:時給換算します。 500~1000円
1時間当たりの修理金額(材料費なし)合計5500~13000円
ファゴットは定期的にメンテナンスと調整(修理)が必要で、常に最良の状態を維持するのに欠かせない作業なので楽器を吹いた後はメンテナンスしましょう!特に水分は対敵です。演奏後はキーをクロスで丁寧に拭き、内管はスワブでゆっくり掃除します。吹かないときは必ず楽器ケースにしまいます。
定期的なメンテナンス)
・1~3カ月に一度はキ-オイルを注してください。最初にボディにねじ込んである丸いポストとキ-のパイプ部分との隙間にオイルを注し、キ-を素早くトリルのように動かし、キーの表面に残ったオイルをテッシュで丁寧に拭き取ります。
・1カ月に一度はスプリングやキーコルクが外れないようにボディ表面の埃をブラシで取り除きます。キ-はポリッシュクロスできれいに磨いてください。楽器のケ-ス内の埃や羽根は荷作りテ-プ(ガムテープ)を軽く当てて取り除きます。
・バスーンのボディは湿気に敏感です。梅雨時から夏にかけてはボディが膨らんで各ジョイントがきつくて入りにくくなります。その場合は糸を解いて調節してください。反対に冬の乾燥時期は緩くなるので糸を足して調節してください。
・調整はより吹きやすくする作業、修理は部品交換などで元に戻す作業を指します。バスーンは年に一度は調整に出して下さい。その方が結果的に修理代金が安くなります。
ファゴットの調整は吹き方とリードに合わせます。修理や調整は吹き方(呼吸、アンブシュア)やボーカル、リ-ドの状態で変わるので、吹き手の好みや考え方を修理者と共有する必要があります。呼吸方法に問題があると楽器だけでは直せません。特にタンポの共振、トーンホールに水が溜まる、高音域が下がる、音が詰まる等は呼吸の改善も必要です。
ピッチや音程等はアンブシュアと楽器の双方に関わってきます。場合によってはアンブシュアを改善したほうが良い結果を生みます。音色、吹奏感、息の抵抗感等は、リ-ドやボーカルが大きく関与します。そのため、好みの調整にするには使用リードの変更やボーカルの交換も必要です。
ボーカルはファゴットの一部で基本は楽器本体と同じメーカーを用います。しかし、楽器メーカーよりも優れたボーカルを製造するメーカーのものを使用することで楽器の性能を飛躍的に高めることが出来ます。ボーカルは1番と2番があり大きくなるにつれ3~5㎜長くなりピッチは低く息の抵抗感は強くなります。特殊な長さには0番や3番があります。使い方は季節によって使い分けますが短いボーカルは音色重視、長いボーカルは音程やピッチといった性能重視と言われているためか年間を通して変えない奏者が多いようです。ファゴットのボーカルの取り扱いは慎重に行わなければなりません。掃除は楽器本体同様、毎日がベストです。また、曲げないように注意してください。特に楽器に差し込む際にボーカルが曲がらないように持ち方を工夫してください。角度が変わると音程やピッチが変わってしまいます。
3.自分で調整してみよう!
ファゴットはその大きさに似合わず繊細な楽器なので些細なことでならなくなることがあります。そのときに少しでも修理の知識と技術があると気持ち的に安心です。かといって慢心してはいけません。自分で修理を行う時は「触るのは1ヶ所だけ」に留めることです。2ヶ所以上同時に触ると分からなくなります。自分で行う場合は「あわてない」ことがです。たとえば、スワブが詰まった時など慌てなければ自分で直せるケースも少なくありません。
自分で調整するときは安全第一に考えてください。特に力がかかる作業のときは万全の状態で行ってください。焦っている時こそ「冷静に、落ち着いて、よく考えて」対処してください。そして、明るい所で作業に合った工具を使用してください。ドライバーをネジに押し付けて回す時は滑って手を怪我しないように、楽器に傷をつけないように注意しましょう!ペンチでキーを挟んで曲げるときなど力が入っている時に怪我をします。接着剤の取り扱いには十分注意してください。特に瞬間接着剤は液が飛び出る危険があるので、目を近づけて作業しないでください。できれば、容器に一度出して針で付けるなど安全を確保してください。スプリングを曲げるときは目を離して行ってください。30年以上古い楽器や錆びてるスプリングは突発的に折れて飛び散るケースが少なくありません。
4.ファゴットの各部の呼び名を覚えよう
・キーの音名(#とb)は一般に用いられているドイツ音名で表示しています。
低音域 :LowB.LowH.LowC.LowC#.LowD.LowEb.LowE.LowF.LowF#.LowG.LowG#.LowA
中音域 :B.H.C.C#.D.Eb.E.F.F#.G.G#.A
中高音域:MidB.MidH.MidC.MidC#.MidD.MidEb.MidF.MidF#.MidG.MidG#.MidA
高音域 :HighB.HighH.HighC.HighC#.HighD.HighEb.HighE.HighF.HighF#
*ボディの名称(テナージョイント=テナー等、省略表示)
・木部(トーンホール)
テナー :HighEホール、HighD、HighC、Aオクターヴ、F、E、D、C-C#tr、C#、Ebtrホール
ブーツ :C#trホール、C、Gリゾ、H、Bb、A、G#、G、替F#、F#、F、Eホール
ロング :Ebホール、Dホール、LowC#、LowC、LowHホール
ベル :LowBホール
・金属部(ポスト、スプリング、キーガード、固定ネジ、ジョイントロック&ピン、U字管&キャップ)
テナー :ボーカルベルト、F&E&Dチューニング(プラスチック、メタル)、テナージョイントリング
ブーツ :ブーツベルト、ストラップリング、ジョイントソケット、C&Gリゾ&Hチューニング
ロング :ジョイントリング
ベル :ベルジョイントリング、ベルリング(プラスチックorメタル)
*音を変えるための金属部の名称
・○○キー(指で直接押さえ、且つタンポの付いた金属部) C延長キー、Cリングキー、Aリングキー、Eキー
・○○レバー(指で直接押さえる金属部)
テナー :HighEレバー、HighD、HighC、HighAオクターヴ、C-D#tr、Ebtr、C#、PP、PPロック、C#レバー
ブーツ :C#trレバー、B、B(替え指)、G#、G#(替え指、Ab-Btr、G、F#、F#(替え指)、Fレバー
ロング :LowDレバー、LowC、LowC(替え指)、LowEb、LowC#、LowH、LowBレバー
・○○カップ(トーンホールを塞ぐタンポの付いた金属部)
テナー :HighEカップ、HighD、HighC、HighAオクターヴ、C-D#tr、Ebtr、C#、PP、C#カップ
ブーツ :C#trカップ、Gブリル、B、G#、G#(替指)、Ab-Btr、G、F#、F#(替指)、Fカップ
ロング :LowDカップ、LowC、LowEb、LowC#、LowHカップ
ベル :LowBカップ
5.調整に必要な工具を揃えよう!
・ドライバ-:ファゴット用は長いドライバーが適し、メーカーとしては「PB」「ベッセル」等があります。シャフト用に2㎜幅(精密4番程度)の太さと剣ネジ用の3~4㎜程度のドライバーを用意してください。使い方はドライバーをしっかりと握り、ネジの頭の溝に押さえつけるように当てて締めるときは右回り(時計回り)緩めるときは左回りに回します。ドライバーはネジの幅、溝に合うものを見つけてください。ドライバー次第で調整の上手か下手かが決まってしまいます。
・調整紙(薄さ0.02㎜のクリ-ニングペ-パ-を底辺約8cmの二等辺三角形に切った物):調整紙はタンポの塞がりをチェックするのに用います。ファゴットはトーンホールが比較的大きく、調整紙の引っかかりもわかりやすいので難しくありません。ただし、楽器本体の管厚のため光や目視ではわかりにくい楽器です。使い方は調整紙をタンポとト-ンホ-ルの全面に当たるように間に差し込み、キ-を極軽く押さえて引っ張ります。理想は演奏中に押さえる力です。親指は指の中で一番鈍いので親指でキーを押えるときは特に軽く押えてください。抵抗なく抜ける場合は塞がっていないことになります。調整紙を持つ力とタンポとホ-ルから引き抜く力は極軽く行ないます。さらに調整紙には裏表で滑り具合が違うので注意しましょう。タンポがホ-ルに均一に当たっているか調べる場合は、調整紙の細い所を使ってタンポがホールに当たっている部分を5カ所調べます(前、両サイド、後のアームの脇2ヶ所)
・スプリングフック:ニードルスプリングの掛け外しや、スプリングの強さを調節するために使用します。形はいろいろありますが、ファゴットは細めのタイプが良いでしょう。タイプは一体型タイプ(スプリングを引っ張る部分と押す部分が一体)と分割型タイプ(細い棒の両端が引っ張る部分と押す部分)に分かれます。一体型の方が効率的に良い反面サイズがやや大きいため使い勝手は悪くなります。分割型はいちいちひっくり返さなければならない反面、価格の安さと細かいところで使えるので一長一短があります。使い方はスプリングがボディ表面の掃除等で外れた場合や正しい位置にかかっていない場合に用います。ファゴットのスプリングは比較的強く、自分で強さを調節する必要はめったにありません。また、多くのファゴットはスプリングがステンレスなので折れることも稀です。古い楽器でスプリングが鋼鉄の場合は錆びていると折れるので注意してください。
・ペンチ:挟む面が平らなペンチで2㎜くらいのものを挟んだ時に平行になるペンチを用いてください。ギザギザのペンチでキーを挟むときーがキズだらけになるので絶対に使わないで下さい。緊急でギザギザペンチを使用せざるを得ない場合は紙やクロスなどを挟んで用いるしかありませんが、反対に滑ってキーに大きな傷をつけかねません。基本は曲がったキーを直すのに用います。ただし、曲がりどころが悪かったり、強力に曲がっていると元に戻す際に確実に折れるケースも少なくありません。まずは、よく観察してください。溶接部分から曲がっている場合は折れる危険性がさらに高まります。また、メーカーによっても折れやすいメーカーがあります。使い方はペンチはキーを掴む場所と、面積、そして握力です。掴んだら目いっぱいの力で固定します。もちろん、掴む場所もよく検討してください。なるべく広い範囲で掴むことが安全を生みます。
・ノックピン&ハンマー:シュライバー#5016モデルなどシャフトがネジではなく「ただの棒」が入っている楽器のキーを取り外すにはシャフトの太さより少し細いノックピンを用意します。太さは1.5㎜前後の金属棒が良いのですが、外さないことをお勧めします。
・ジョイント糸:ジョイント糸は細い綿糸(ボタン糸等)で色は赤以外の色を用いると元の糸と区別が出来て後から解くに便利です。手芸店などで手に入ります。また、薬局で販売されているデンタルフロス(ワックス付)を利用するのも一つです。ただし、デンタルフロスはボディを締め付ける危険性があるので大量に巻かないで下さい。
6.スプリング調節
ファゴットのキーはニードルスプリング(針バネ)とフラットスプリング(板バネ)によって作動します。ニードルスプリング(針バネ)はポストに固定されていて各キーのスプリングかけに引っ掛けてあります。材質はステンレスが一般的で、古い楽器に鋼針が使われています。サイズはファゴットの場合0.5㎜~0.9㎜が使われて太く短いほど強くなり、軽(0.5㎜短~0.6㎜長)中(0.6㎜短~0.7㎜長)強(0.7㎜短~0.9㎜長)の3種類に分かれます。細いスプリングは先がとがっていなくても危険です。フラットスプリング(板バネ)はキーの裏にネジで止められていて、オクターヴ&C#キー、LowE、LowBカップに用いられています。ニードルスプリング、フラットスプリング共に材質、太さ、長さ、曲げ方(向き)で強さや力の向きが変わるので基本的には変えないで下さい。
[重要] ファゴットはボディが楓(メープル)なので地盤が弱いという欠点を持っています。そのため、スプリングを強くすると固定されていたポストが緩み、スプリングの力で回ってしまうトラブルが数多く発生します。それを防ぐために接着剤や回り止めのピンを打ってありますがポストの回りを直すのはとても難しく、修理に出すしかありません。さしあたって出来ることはスプリングを使える限界まで弱くするしかありません。
・ニードルスプリングのはずし方と掛け方
ニードルスプリングはスプリングフックで「掛け、外し」を行います。スプリングフックを当てる位置はニードルスプリングの先端に近い部分に当てて掛け外しを行ってください。外れやすいスプリングは引っ掛ける部分との角度が悪いためでニードルスプリングを引っ掛ける部分より、シャフトまたはパイプの中心寄りにニードルスプリングの根元付近をスプリングフックで押し上げながら(押し下げながら)曲げます。
・ニードルスプリングの曲げ方
ニードルスプリングの曲げ方はニードルスプリングが完全に作動した状態で一直線になるのが理想です。一部分だけ曲げると作動したときに弓なりになってどこかに接触したり、キーの押さえ始めと終わりの力の差が大きくり、塞がりにくく押さえづらくなります。スプリングフックを使って曲げる場合は、ニードルスプリングの中央から先端寄りの位置を引っ掛けて曲げます。ただし、ニードルスプリングを弱くする場合はキーに引っかかっている部分に近い場所をスプリングフックで押し引きします。ニードルスプリングの根元で調節しようとすると折れます。特に古い楽器のニードルスプリングは折れやすくなっています。
・フラットスプリングの曲げ方
フラットスプリングはニードルスプリング同様、全体に丸みを帯びるように曲げてありますが、特にキーの動きを強く速くしたい場合は先端に近い側を曲げます。
7.キ-関連のキーコルク調整
調整は明るい場所で安全第一に行なってください。特にドライバ-で手を刺したり、楽器に接着剤を垂らしたりしないよう注意が必要です。調整の際は数箇所を同時にコルクを貼ってはいけません。そして、ネジのドライバ-の溝の向き等、前の状態を確認(メモ)してから行いますがネジ類はその都度、元の位置に戻してください。
調節時の指の押し加減と感触について
ネジ調節はキ-を押さえてチェックする時に右手親指を多く用いますが、親指は他の指よりも力が強く鈍感なので極軽く押さえてください。また、調整紙も人差指と親指で極々軽く挟み、引き抜く際に手からすべって離れるくらいがベストです。タンポの条件が異なると調整紙を引き抜く感触が変わります。
8.ジョイント調整
・ジョイントの木部が膨張して入らない場合
新品の楽器や、湿気が異常に多い時期はボディが膨張してジョイントに正しく入らないことがあります。この場合はボディを削るしかありません。出来れば、修理に出した方が無難です。緊急の場合はどの部分がきつくて入らないか、良く観察してください。多くは各ジョイントの凸部分の付け根がきつくなります。その後、180~240番のやや荒めの耐水ペーパーを5㎜前後の幅で20㎝くらいの長さに切って両端を持って鋸のように左右に動かして削ります。そのときに楽器は固定していなけばなりませんが、誰かにしっかり固定してもらうようにしましょう。
・ジョイントはグリスで調整します。
ファゴットは季節ごとにジョイントがきつくなったり、緩くなったりします。これは湿度の影響によるもので湿度が高いとボディが膨張し、低いと縮みます。わずかにきつい、緩い場合はグリスだけでも調節が可能です。きつい場合は、さらっとしたシリコン系のすべすべしたグリスを塗るとスムーズに組み立てることが出来ます。逆に緩い場合は粘りのある重いグリスを塗ると「すぽッ」と抜けたりしません。
[重要] 注意することはグリスを長い時間塗った状態にしておくとボディがグリスを吸って膨張します。グリスはなるべく必要最低限に使用後は軽く拭き取っておくと良いでしょう。
・ジョイントが糸の場合
ファゴットのジョイントは糸で調節できるようになっています。ジョイント糸の一番大変な作業は糸の最後を見つけることです。グリスが塗ってあるとなかなか見つけることが出来ません。ジョイントがきつくなった場合は、最初に糸の最後を見つけておきます。次に、古いグリスをティッシュでふき取ります。その後新しいグリスを塗ってから組み立ててみます。それでもきつい場合は、糸を少しずつ解いてください。どうしても糸尻が見つからない場合は糸が緩んでいる部分を切って解いて下さい。緩い場合は満遍なく糸を巻いてください。
・ジョイントがコルクの場合
ジョイントがコルクの場合は微調整が難しく、きつい場合はコルクを削ります。ただし、グリスが染み込んだコルクは削りにくく荒い耐水ペーパーで落とすしかありません。その前にシリコン系のさらさらのグリスを一度塗って、古いグリスごと一緒に拭き取るようにします。その後、再度さらさらグリスを塗って組み立てます。反対にコルクが緩い場合はコルクの上から糸を強めに巻きつけます。コルクの上に糸を巻くと何度か組立て分解を繰り返すことで糸が滑ってずれてしまいます。
9.ピアニシモキーの調整方法(この調整は楽器&ボーカルを組み立てて行います)
ファゴットのキー調整で一番狂いやすいのがpp(LowE-ppカップ)の調節です。この調整の前に必ず「いつも吹いている角度」に楽器を組み立てた状態で行ってください。
① ppロックが作動していないことを確認します。
② LowEキーを押してppカップがボーカルppホールを塞いでいるかチェックします。
③目で見て開いている場合はテナーのpp連絡キーとLowEキーとの接続部分(コルク、黒、透明チューブ等)に、ppキーがLowEキーを押して塞がるまで、セロテープを何回か巻きつけます。加減はボーカルppホールにppカップが軽く当たっている位くらいです。
④分からないときはボーカルppホールとppカップの間に調整紙を挟んで引っ張ってみましょう!軽く抵抗があれば正しい状態です。
④LowEキーを強く押さえないとLowEが閉まらない場合、多くは楽器の組立ての角度が悪いかキーを曲げた可能性があります。自然にLowEキーが閉まりにくくなることは稀です。組立てに問題がなければpp連絡キーについているコルクを削るか、黒または透明のチューブを取り除いてセロテープで調整します。通常はpp連絡キーを曲げて角度を変えて調節しますが、力が必要なのと他の箇所が曲げやすいので避けた方が無難です。
④ボーカルppホールとppカップの開きが大きすぎる場合はppレバーを深く押し込むことで操作性が悪くなるのでppレバーとppカップのキー同士が接触している箇所(コルク、黒or透明のチューブ)に、セロテープを何回か巻きつけます。ppカップのキーが比較的柔らかい楽器だと、人差し指と親指を使ってキーをひねるように曲げて調節します。いずれもc.の調整をやり直さなければなりません。
④ボーカルppホールとppカップの開きが狭い場合これはppカップのタンポが膨張することで発生します。直す方法はppカップを曲げるしか対処方法がありません。ppカップのpp連絡キーとの接触部分(コルク、黒or透明チューブ)を指でひねるように持ち上げます。
⑤LowEより低い音が出るかチェックします。
10.テナージョイントの調整方法(ピアニシモ調整は9参照)
テナーは3~5ヶ所が連動しています。その他のキーは単独キーなので動きや開きをそれぞれ調節します
(HighEレバー) :(E-F#trレバー)と調節ネジで連動していてネジ下に遊びがあればOK
(HighDレバー) :単独キーなのでしっかり塞がっていれば問題ありません
(HighCレバー) :(C#-D#trカップ)と連動します
(octレバー) :機種によりppキーと連動しています
(C#レバー) :(C#-D#tr)と連動しています。丸いキーコルク下に遊びがあればOK
(ppレバー) :キーの高さが周りのキーと同じことを確認します
(ppロック) :金属がすり減って効かない場合があります。調整は困難です
(D-Ebtrレバー):ブーツからの連動タイプはキー同士の接続部に遊びが必要です
(C#-D#tr) :(HighCレバー)、(C#レバー)との間に遊び(隙間)が必要です
①(HighCレバー)と(C#-D#trカップ)
この2つのキーの連動部分にわずかな隙間が必要です。隙間がないと(C#-D#trホール)が開きっぱなしになりDやEがうわずり、鳴りにくくなります。調節方法は(HighCホール)とトーンホールの間に四つ折にした紙を挟み(HighCレバー)を上に持ち上げて曲げます。曲げた後に紙を取り除き、連動部分の隙間が0.5~1.0㎜になるように調節します。持ち上げすぎて隙間が大きくなった場合は、HighCカップを左手親指で押さえ、HighCレバーを右手親指で押えて、少しずつキーが下がるように調節します。尚、HighCキーだけを微妙に作動させたい場合は隙間を1.5㎜前後に大きく取ります。
②(C#レバー)と(C#-D#trカップ)
この2つのキーの連動部分にわずかな隙間が必要です。隙間がないと①同様に(C#-D#trホール)が開きっぱなしになりDやEがうわずり鳴りにくくなります。調節方法は(C#カップ)とトーンホールの間に四つ折にした紙を挟み(C#レバー)を上に持ち上げて曲げます。曲げた後に紙を取り除き、連動部分の隙間が0.3~0.5㎜になるように調節します。持ち上げすぎて隙間が大きくなった場合はC#カップを左手親指で押さえC#レバーを右手親指で押えて少しずつキーが下がるように調節します。
③(Cリングキー)と(C#-D#trカップ)
この調節は必要ありませんがキー間のコルクが取れたり、スプリングの強さや向きが悪いと(Cリングキー)と(Dホール)が同時に押えにくくなります。チェック方法は左手薬指で(Cリングキー)と(Dホール)を押えた際に2つが正しく押えられるか調べます。(Cリングキー)が(Dホール)よりも深く押えなければならない場合は途中のキーコルクが取れているので薄いコルクを貼るか紙を挟んでください。(Cリングキー)が高くて(Dホール)が指に届かない場合はポストが曲がったり(Cリングキー)と(Dホール)が接触している可能性が高いので修理に出すしかありません。
④HighE調節(HighEキー)と(E-F#trキー)
この調節はネジで出来る楽器が多いので難しくはありません。(HighEレバー)を押したときに(E-F#trキー)がわずかに遅れて開くだけの隙間があれば問題ありません。ただし、このネジは硬くて動かないことが多く、触らない方が無難です。
⑤A-pp調節(octカップ)と(ppカップ)
この連結はオプションキーなので通常は装備されていません。調節方法は(octキー)を完全に作動させた状態で(ppカップ)がボーカル(ppホール)を塞ぐようにします。これは(octカップ)に連動されている(A-ppキー)のコルクの厚みで調節します。(A-ppキー)が可動式(on、off切替式)の場合は角度を微妙に調節します。注意することは、この連結を完全にすると、通常の(ppレバー)と(ppカップ)との連動に遊び(タイムラグ)が出来ることが少なくないので注意してください。
⑥(Ebtrカップ)と(右Ebtrレバー)ブーツ
この調節は右手人差し指で(Ebtrカップ)を作動させるオプションキーの調節でテナーとブーツを繋げて行います。通常は装備されていません。方法は簡単でテナーとブーツを繋ぐキーの間に必ず隙間があることを確認してください。少々大きくても構いません。ここに隙間がないと(Ebtrカップ)が浮いて全体の鳴りやピッチがおかしくなります。隙間がない場合はテナーのカップ側のキーをカップを左手親指で強く押さえながら接合部付近を右手親指で押えてキーを下げて隙間を作ります。
11.ブーツの調整方法
・メイン列側
(C#trレバー) :単独キーで弱くなければ問題ありません
(Gリングキー) :タンポがくっついて離れない現象が多々あります
(替Bレバー) :錆びの発生率が一番の箇所なのでこまめにオイルを注してください
(Gレバー) :裏側との連絡棒で繋がっており連絡棒の動きが鈍いことがあります
(Fレバー) :メイン列では一番キー連動が多く、調整が必要なキーです
(替F#レバー) :単独キーで作動前にFキーに接触していなければ問題ありません
(Abレバー) :タンポが腐りやすく、ぶつけやすいキーなので注意が必要です
・右手親指側
(Bレバー) :Bタンポと連動していますが、ほとんど調整の必要のないキーです
(Eキー) :PPと連動しているので必ず調整の必要なキーです
(F#レバー) :構造上、スプリングを強めにしないと機能しないキーです
(替Abレバー) :特に問題ないキーです
(Ab-Btrレバー):オプションキーで複雑な機能の楽器もあります
① (Fレバー)と(Gリングキー)
特にHからEの音がうわずる場合は(Fレバー)と(Gリングキー)の調整が悪く(Gリゾカップ)が浮いている場合です。この部分は使用頻度が高く、強度的にも弱いので定期的なチェック&調節が必要です。まず、全てのキーを作動させない状態で、(Gリゾカップ)が正しく塞がっているかチェックします。(Gリゾカップ)を直接指で押さえて雨後かに事を確かめてください。分からない場合は(Fレバー)を押して(Gリゾカップ)を開けて調整紙を挟んで(Fレバー)を離して調整紙が動かなければ正しく塞がっています。浮いている場合は(Gリングキー)と(Fレバーキー)との接触部に薄いコルクを貼るか紙を適当に折り曲げて挟みます。チェック方法は(替F#レバー)と(Fレバー)との間にわずかな隙間があることと裏の(F#レバー)を作動させたときに(Fカップ)とその上の連絡キー(連絡棒)との間に隙間があることを確認してください。
② (Fレバー)と(Gカップ)
この連動は狂うことは稀で、どちらかというと連動部分のコルクがつぶれて(Gカップ)の開きが大きくなるためコルクを足すか、紙を挟んで(Gカップ)の開きを適度に押えます。ただし、①の調整でコルクの厚みによっては(Gカップ)の開きが極端に狭くなります。その場合は①をやり直してください。
③ (Fレバー)と(連絡棒)と(F#カップ連絡キー)
(Fレバー)とブーツジョイントの中を貫通している(連絡棒)との接触部分は(Fレバー)のコルク(フェルト)がボディに当たっているか、わずかに浮いている程度になっているか確認してください。隙間が大きく開いている場合は①の設定が悪いのでやり直してください。接触部のコルクが厚すぎるかキーの曲げ角度が悪いかのいずれかです。次に右手親指で(F#レバー)を作動させて(F#カップ連絡キー)との間にわずかな遊びがあることを確認してください。ない場合は(Gリゾカップ)がまだ、開いている可能性があります。その場合は(F#カップ連絡キー)の接続部のコルクを耐水ペーパーで薄くしてください。わずかな遊びが出来ればOKです。反対に遊びが大きいとF#のピッチが高くなります。
④ (替F#レバー)と(Fレバー)
この調整は簡単で(替F#レバー)を押したときに下の(Fレバー)との間に隙間があるか確認してください。この隙間は大きくても構いませんが大きすぎると替え指のF#が高くなったり、機種によっては他のキーと接触するので(替F#レバー)の底にコルクを貼って隙間を少なくします。(替F#レバー)が曲がっていて隙間が大きい場合は(替F#カップ)と(替F#レバー)をそれぞれの親指で強く押さえて曲げます。逆に隙間がない場合は(Fレバー)が作動している状態になるので、1.に影響します。その場合は、(替F#レバー)と(Fレバー)の隙間に金属の板(なければ幅広のマイナスドライバー)を隙間に入れてこじ開けるように上に引き上げると隙間が出来ます。
⑤ (替Bレバー)と(連絡棒)と(Bカップ)
要領は③と同じで(替Bレバー)の裏側と(連絡棒)の接触部分にわずかな遊びがあることを確認してください。遊びがないとBカップが浮きっぱなしになっています。その場合は、まず(替Bレバー)を押したBのピッチがちょうど良い場合は(替Bレバー)とボディが接触している部分のコルクを耐水ペーパーで薄くします。Bのピッチが高い場合は(Bカップ)を押えながら(Bカップ)と(連絡棒)が接触している細長い金属部分を持ち上げて接触部分の隙間を大きくします。もし、持ち上げすぎた場合やBのピッチが低い場合は、細長い金属部分を押し込むように押えます。
⑥(Bレバー)と(Bカップ)
(Bレバー)と(Bカップ)の接触部分に遊びがあれば問題ありません。(Bレバー)のスプリングは反転しているので、遊びがあるかどうかは(Bレバー)をわずかに持ち上げてチェックします。もし、Bのピッチが高い場合は(Bレバー)と(Bカップ)の接続部を左手親指で押さえながら、右手親指で(Bレバー)を押すと(Bカップ)の開きが狭くなり、ピッチは下がります。逆にBのピッチを上げたい場合は、(Bレバー)の裏側を右手人差し指で持ち上げるようにわずかに曲げます。最終的に⑤の(替Bレバー)と(Bレバー)の動きが同じになるように調節します。
⑦ (Gレバー)と(連絡棒)と(Aカップ)
(Gレバー)は連動が複雑で長いキーなので狂いが早くなるので、時々チェックしてください。簡単なチェック方法は(Aカップ)の開きを調べてください。(Aカップ)の開きが大きくなっている場合は、キーのガタやコルクの摩耗が進んでいる証拠です。その場合は、(Aカップ)の(連絡棒)との接触部分にコルクを足してください。(Gレバー)の高さが高くて押え難い場合は(Gレバー)とボディの間に薄いコルクを足してください。
⑧ (Abレバー)と(連絡棒)と(替Abレバー)
この替え指はあまり用いません。
12.ロングジョイント&ベルの調整方法
(LowDレバー) :スプリングが強くなければ問題ありません
(LowCレバー) :スプリングが強すぎず、弱すぎない強さに調節してください
(替LowCレバー):LowCレバーと同じです
(LowHレバー) :一番重要なキーでLowHカップの開きを調節してから行います
(LowBレバー) :レバーの高さが重要です。高いとテナーの指が届かなくなります
① (LowCレバー)と(LowDカップ)
LowCより低い音が出ない場合は(LowCレバー)を押したときに(LowDカップ)が塞がっているかチェックします。方法は(LowCレバー)を押してトーンホールを完全に押える直前、0.3~0.5㎜に(LowDカップ)のスプリングを感じるように(LowDレバー)底の薄い金属をペンチで曲げて調節します。曲げすぎると(LowCレバー)を強く押さえないと鳴らなくなります。また、弱いとLowC以下の鳴りが悪くなります。
② (LowCレバー)と(LowHカップ)
(LowHレバー)を押したときに(LowHカップ)と(LowCカップ)が同じように閉まるように(LowCキー)と(LowHレバー)との隙間を調節します。方法は、キーを押したり持ち上げることで調節が出来ます。作動させたときに(LowHカップ)が閉まらない場合は(LowHレバー)を少し持ち上げます。反対に(LowCカップ)が閉まらない場合は(LowHレバー)の両端を押えて曲げます。多くの場合はそのままでは難しくキーをはずして内側に少し曲げます。(LowBキー)とシャフトを入れたまま。
13.コントラファゴットの調整方法
コントラファゴットも基本はファゴットと同じですが、付いているキーの形や位置、連動が異なるのでファゴットを熟知してから取り組んでください。まず、U字管をチェックします。使用頻度が少ないとグリスの酸化などで金属部分に緑青錆が発生してU字管が動かなくなります。楽器を使わない時期が長くなる場合はU字管の動きをチェックしてください。不幸にもU字管が動かなくなった場合は錆取り液を隙間に入れて、U字管を熱した後に金管楽器のスライドを直すように、タオルをU字管に通して引っ張ります。ポストをプラスチックハンマーで叩くのも有効ですが、強く叩くと接着(半田)が取れてしまうのである程度の力加減で根気よく続けます。動くようになったら錆を取り、比較的軽いスライドグリス(金管用)を縫ってください。次に、ボーカルの差込口からU字管まで金属でできている部分に小さなホールが3個あります。これらは、オクターブ高い音を出しやすくするためですが、正しく閉まっているか、正しく開くかをチェックします。コントラファゴットはキーが長いので曲がりやすく、連動も繋がりにくくなります。後は、Eレバー、Fレバーでカップが2つ同時に閉まるように間の接続部分をコルクで調節します。